「虹の女神」をようやく観る

虹の女神 Rainbow Song [DVD]

虹の女神 Rainbow Song [DVD]

随分前から観たいと思っていたこの作品。ようやく観た。

「純粋であること」を陳腐になる寸前で真っ直ぐに描ききった佳作。不器用な男の子と女の子。そして冒頭に知らされる女の子の死。舞台設定としては本当にありふれたものだけれど、岩井俊二直系の少しざらついた質感の映像と上野樹里の見事な演技によって、ラストシーンの涙が純粋に美しいものとして表現されている。

主人公の岸田(市原準人)は徹頭徹尾駄目で鈍感でどうしようもない人物として描かれる。しかし映画全体を通じて彼の愚かさが描かれることで、実はその彼をこの世界に正しい形で引き留めているのが「女神」たるあおい(上野樹里)であることが示される。ただこの「女神」は慈愛に満ちた典型的なそれではなく、むしろむらっけがあってわがままに見えて、だからこそ岸田はその重要性に気づくことが出来ない。岸田がそのことに気づくのは、彼女が死んだと知らされた時ですらなく、彼女の部屋に静かに残された真摯なメッセージに触れたときだ。そして彼がそのことに気づいた時映画は静かに終わる。

この難しい「女神」役を上野樹里が見事に演じている。本当に素晴らしい。って上野樹里ファンとして贔屓目もあるんだけど、完全どころか脆くて不完全、だけれどどこまでも純粋な女性を、深い共感を抱かせる役柄として演じる力は確かなものだと思う。

容易には気づかず、はっきりと形として表れていないかもしれないけれど、僕達をこの世界に結び付けている何かがあるのだということをうまく表現した作品。映画で泣くのはいいですね。