Season1 Episode 3, Patsy Cline, Joe Purdy

英語最近力が落ちてきているのでLostをSeason 1から観始めることにする。使われている音楽をメモっておくことにした。

Lost Season 1 Episode 3 Tabula Rasa

Patsy Cline, Leaving on your mind
Kateが舞い込んだ農園のおっさんが、懸賞金目当てでKateを騙して駅まで送っている最中にラジオから流れる音楽。

Joe Purdy, Wash Away
エピソードの終わり、登場人物達の静かな交流と共に流れる。SayidがSawerにリンゴを投げて渡すシーンがよい。

「虹の女神」をようやく観る

虹の女神 Rainbow Song [DVD]

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随分前から観たいと思っていたこの作品。ようやく観た。

「純粋であること」を陳腐になる寸前で真っ直ぐに描ききった佳作。不器用な男の子と女の子。そして冒頭に知らされる女の子の死。舞台設定としては本当にありふれたものだけれど、岩井俊二直系の少しざらついた質感の映像と上野樹里の見事な演技によって、ラストシーンの涙が純粋に美しいものとして表現されている。

主人公の岸田(市原準人)は徹頭徹尾駄目で鈍感でどうしようもない人物として描かれる。しかし映画全体を通じて彼の愚かさが描かれることで、実はその彼をこの世界に正しい形で引き留めているのが「女神」たるあおい(上野樹里)であることが示される。ただこの「女神」は慈愛に満ちた典型的なそれではなく、むしろむらっけがあってわがままに見えて、だからこそ岸田はその重要性に気づくことが出来ない。岸田がそのことに気づくのは、彼女が死んだと知らされた時ですらなく、彼女の部屋に静かに残された真摯なメッセージに触れたときだ。そして彼がそのことに気づいた時映画は静かに終わる。

この難しい「女神」役を上野樹里が見事に演じている。本当に素晴らしい。って上野樹里ファンとして贔屓目もあるんだけど、完全どころか脆くて不完全、だけれどどこまでも純粋な女性を、深い共感を抱かせる役柄として演じる力は確かなものだと思う。

容易には気づかず、はっきりと形として表れていないかもしれないけれど、僕達をこの世界に結び付けている何かがあるのだということをうまく表現した作品。映画で泣くのはいいですね。

いったいなにが言えるだろう

1Q84」読了。読む前から何となく感じていたが、読み終えて確信した。村上春樹の最高傑作だと留保無く言える作品だ。文章は最後まで緊張感を保っている。比喩や風景の描写も見事。過去の作品に見られるような冗長性は皆無。言うべきことは全て言い尽くされ、無駄な表現は少しも見られない。そして物語性。ねじまき鳥に少し見られたぎこちなさや混乱は無い。神話的構造の卓抜なる表現。

ああこういう作品をうまく言い表す言葉を持っていたらいいのに。でもそれでいいのかもしれない。さかしらな感想や批評なんかに回収されない、これからの人生を間違いなく暖め、支えてくれる物語に触れたのだから。村上春樹で号泣したのは学生以来だ。本当に凄い作家だと思う。

いよいよ発売。映画三昧。

村上春樹の新作「1Q84」が遂に発売され早速購入。そのタイトルからして大作の予感を漂わせており一気に読むのが惜しい。ということで明日が返却期限という現実的な理由から「グッバイ・レーニン」を鑑賞。見事なユーモアと結末のビデオに示される希望に満ちた世界観。
社会主義の理想、というのは形を変えながらいつまでも人の心を掴む。確かに、地獄への道は善意で敷き詰められている、とは言い得て妙なのだが、人の善意や理想が持つ力への信心を容易に捨てられるものではないなと思う。

ここ1週間で観た映画は実に6本。機内で4本。自宅で2本。「スラムドッグ・ミリオネア」「グラン・トリノ」「ミスティック・リバー」「Bride Wars」「ミリオンダラー・ベイビー」「グッバイ・レーニン」。「Bride Wars」だけ(笑)って感じだが、それ以外どれも名作と呼ばれるに相応しい作品だった。映画はあまり観ない方なのだがこうして立て続けに観ると色々と思考が活性化される。

と、「1Q84」からは随分離れたが、明日からじっくり、時間をかけて久々の村上作品を堪能したい。楽しみだ。

持続的な信心

幻影の書

幻影の書

ゆっくりと読み進め読了。ストーリー性が高い上(当然ながら)柴田訳は見事な品質を保っていて心地良い読書体験だった。オースターの物語は、まずオースターという全体を制御する人物がいて、一方でその作品内で動きだす登場人物がそれぞれ固有の物語性を持って人生を生きる(そこには喜劇あるいは悲劇がある)、という入れ子の構造が細部まで意識された形で構築されているから安心して読むことができる。柴田氏がオースターは作品内作品、今作でいうとヘクターの映画描写が素晴らしい、と言っているがそういった明示された入れ子構造だけでなく、上記したように物語全体を貫く入れ子構造がオースターの特徴だと思う。

そして、オースターがこの日本にいる僕の心を温めてくれるのは、彼が信じている「物語」というものの力だ。

ヘクターの自伝を7年間書き続けているアルマという女性。彼女はデイヴィッドをヘクターに引き合わせようとする。主人公とアルマはこの不思議な邂逅を経て近づいていく。ヘクターの元にデイヴィッドはたどり着き彼と言葉を交わし親密な関係を築くが、翌日の未明ヘクターは静かに息を引き取る。長旅の疲れからそのことを知らずに眠っているデイヴィッド。アルマは彼のベッドの横で彼が目を覚ますのを待っている。そして彼が目をさました時、彼女は死についてすぐに触れない。まずキスがあり、親密な言葉があり、彼にコーヒーを渡す。

ヘクターについてすぐ話し出さないことによって、彼女は私に、物語の結末部分の中に自分たち二人を溺れさせる気はないことを伝えていたのだ。私たちはもう自分たち二人の物語を始動させたのであり、その物語は彼女にとって、もうひとつの、彼女のこれまでの人生そのもの、私と出会う瞬間に至る全生涯そのものだった物語に劣らず大切だったのだ。

アルマはヘクターの物語を紡ぐ事で、自分の人生を生きてきた。人の物語に仮託することで生起する人生。深く絶対的な孤独を癒す手段としてそれはあっただろう。しかし、ヘクター・マンという男の人生を通じて彼女は別の物語の回路と繋がるきっかけをつかむ。それがデイヴィッドであり、ここに引用したようにアルマはその物語をはっきりとした意志を持って始動させようとする。

では、ここで新たに生み出された物語は自由意志の勝利だろうか。簡単にそうとは言えないことは、オースターは残酷にも物語のラストで示す。アルマは自分の意志で確かに物語を始動させたように見えた。しかし、その物語はどこまでもヘクター・マンを巡るものだった。その桎梏が彼女を縛りつけ、彼女の孤独からの解放は不首尾に終わる。

けれど、アルマの残した痕跡はデイヴィッドの心に残りその物語は引き続き彼の中で生きる。オースターは簡単に希望を示してはいない。ただ物語の持つ力と時としてそれが持つ残酷さ、そしてそこからの回復、という転回を今回もまた見事に描いていると思う。安易な内省に留まらないオースターの示す希望に少し励まされたりする。

乾き

GWは5/10まできっちり休みなのでうれし。10日は駅伝があるのでその練習。7,8は温泉。あとCPAの勉強、と盛りだくさん。今日は朝から勉強してさっきインターバル走やってきた。すっごいきつかったけど何とか5本できてこれまたうれし。

あと昨日「ノーカントリー」ようやく観た。映画をあまり観ない僕もコーエン兄弟の作品は好きで、「ファーゴ」は特に思い出深い作品。で、「ノーカントリー」だけど、最初正直言ってその殺人描写に引いた。その描き方の乾ききったことといったら。日常生活の一部のようにシガーは淡々と人を殺し、モスを徐々に追い詰めていく。人が死ぬことにドラマ性を持たせない、というかまるで日々の営みですと言わんばかりの映画でいかにもコーエン兄弟

「ファーゴ」のように白昼夢かのごとく不思議なリアルさを心に残す作品。アカデミー賞ということでもっとポップな感じなものを想像していたけど、全く違っていて嬉しい誤算というか、なんというか。

今日こうして映画について書く。僕の頭の中でシガーは変わらず人を静かに殺し続けている。そしてそこに残される静寂。普段なら鳴り響く音楽たちもそこにはいない。

しなやかな思想

今日はたくさん寝たなー。昨日は結婚式で久々にバイト時代の友人に会い本当に楽しかった。旧友は貴重な存在ですね。

で、今日の夜ETV特集鶴見俊輔が映っていて、おおっと思って観始めたら素晴らしい番組だった。稀有な対談集「戦争が遺したもの」と響きあう、鶴見俊輔自身から語られる日本の戦中・戦後史。鶴見氏の語り口はまさに「思想」がそこかしこに満ちていて、それでいて平易な言葉が選ばれており、見事。

番組タイトルにも使われていた「人民の思想」。名著「民主と愛国」が描き出した60年安保の時の人々の怒り、そしてそれを示した行動(10万人デモ!)。鶴見氏は日本では思想が「国家の思想」に転化してしまうことを指摘し、あの安保の時に表出した「人民の思想」は日本史上稀有な、というかほぼ初めてのもので、それをどう継承していくのか、それが歴史家のまさに今行うべきアクチュアルな課題だと語る。この部分の語りに久々に心揺さぶられるものを感じた。同時に、歴史家だけでなく、今を生きる一人の市民として自分の課題にどうひきつけられるのか考えさせられた。って書くとなんだか教科書的な感想だね。