「ハッピーエンド」の感想などを書いてみたり

過去、とそれに付随する記憶は時として現在を縛るし、たまに未来まで押さえ込んだりする。ハッピーエンドはその過去ってやつの厄介さやそれにくっついてくる痛切さを、能天気な女子二人(ショーコとアキラ)と、情けない男子(ケンジ)と冴えない女子(マリエ)それぞれのストーリーをうまく絡ませながら描いてる。

例えば、ショーコは、アキラとのかけがえの無い過去を大切なものとして保存しているけれど、一方でアキラはその過去ってやつがある種の呪縛となるであろうことを、どこかで理解していた。この自覚の差がショーコの葛藤を生むし、それを描いた第1話が痛切に響く。マリエが会社を首になって連れられていく車を、彼女から借りたCDを持って追いかけ、すっころぶショーコ。このシーンが僕はとても好きだ。「あたし全然無力だ 全然カッコ悪い!」過去が現在の自分を縛り、その不毛を自覚しながらどうしてもその再現を求めて格闘してしまう姿。男とか女とか関係なく、そういうのってリアルだと思う。

で、一番泣けるのはベタだけれどアキラとショーコの再会シーン。自分の漫画への投書にアキラの名前を見つけて、衝動的にショーコはアキラのマンションに向かう。その郵便受けの前で立っているショーコを見つけて「あははは」と笑うアキラと、感動と照れが混じったような顔をするショーコ。この二人の顔が、過去の呪縛を二人の現在に結びつけて解消させる見事な効果を持っている。いやあほんといいです、特にアキラの顔は。

一方で、ケンジとマリエのストーリーはやや紋切りかなという気が。ケンジもいじめという過去を持ち、それをきっかけにマリエと出会い、いったん別れたあとに再会。そこでケンジはマリエとくっつくことで過去の呪縛への自分なりの落とし前をつけるのだけれど、話の展開が余り身につまされる感がなくて感情移入できず。

ということでまとめますと、過去を青春として単に美しく(もしくは陰惨に)描くだけでなく、現実での格闘や他者との出会いを通じて、徐々にその過去が現在に結び付いていき、最終的に穏やかな形で収斂していく様はなかなか読後感が良かった。今度はピースオブケークでも読んでみようかとおもっとります。紹介してくれたさなえさん、さんきゅう。