渡辺利夫、三浦有史 「ODA-日本に何ができるか」

ODA(政府開発援助)―日本に何ができるか (中公新書)

ODA(政府開発援助)―日本に何ができるか (中公新書)

まあ今更の話題だが、ほっとけない 世界のまずしさやLive8で、また世界的にアフリカ救済のチャリティ機運が高まっている。ただ、こうした運動が、ましてやホワイトバンドを腕に巻いたところで、アフリカの貧困の解決に結びつく訳ではない。U2のボノを始め、そうした現実はよく分かっているのだろうが、何度も繰り返してこうした問題を単純化した運動が巻き起こるのはどうにもよくわからない。


ただ、こうした運動も、まあ多くの人にアフリカの問題に目を向けさせるという効果はあろう。けれど問題はその主張だ。ほっとけない世界のまずしさも、対アフリカ援助の増額、教育やエイズ対策などへの支援、途上国のコミュニティ支援、等お決まりのテーマが挙がっている。けど、そこには、国際的な自由貿易に如何にアフリカを組み込んでいくかという話は一切無い。でも、改めて僕が言うでもなく、例えばアジア諸国の驚異的な経済発展は、自由貿易の恩恵だ。以下引用にあるように、アフリカの問題は余りにグローバル化されていないことにある。

サハラ以南のアフリカ諸国は、歴史的経緯や成り行きや、そしてかなりの部分が自分自身や他の政府による政策のおかげで、その他世界経済からかなり孤立している。これを考えると、かれらがグローバル化の犠牲だというのは変な主張だ。サハラ以南のアフリカははっきり言って、グローバル化で苦しんでいるのではなく、グローバル化不足で苦しんでいるのだ。焦点は国際経済との結びつきがもたらす便益をどうやってこの地域にも広めるかということであるべきだ。裕福な国がこれらの諸国と貿易しにくくしている貿易障壁を廃止すれば、出発点としては上出来だ。

 それに対し、インドと中国を見ると、国際経済統合の恩恵がどれほどすごいものかわかる。どちらの国も、自由市場経済のお手本ではない――まったくほど遠い存在だ。しかしどちらの国も、貿易と外国投資の両方の面で、グローバル経済が差し出した機会を活かす道を意識的に選んできたことは否定しがたい。

「格差は増えたか減ったか?」The Economist Mar 11 2004 山形浩生

僕も海外貿易屋のはしくれとして思うけれど、アフリカに工場を作ろうとかいう話って殆ど無い。中国の経済発展が、外国企業の生産基地として産業集積が起こり、雇用が生まれ、更に中国企業の技術レベルも上がっていく、という好循環をベースにしているのを見ると、如何に自由貿易が重要かよくわかる。


ほっとけない、みたいな運動を一概に否定する訳ではないけれど、自由貿易の良い面を軽視しないで、もっとそこに焦点を当てた啓蒙活動をすればいいのにと思う。


って全然本の紹介から外れたが、改めて日本の援助動向について確認しておこうと思って、買いました。まだあんまり読んでないけど、基本的な論点がまとめてあって有意義な感じ。