タテタカコ そら

そら

そら

なぜか昔から映画にそれほど魅かれない僕も、時折行って見たい映画があって、奥さんと連れ立って鑑賞に向かう。「誰も知らない」もそんな映画の一つだった。ラストシーン近く、死んだ妹を川べりに埋葬し、鎮魂と空虚をない交ぜにしたかのような柳楽くんの眼が忘れられない。岡崎京子「リバーズエッジ」の、セイタカアワダチソウが深く茂った、死体のある川べりとあまりに似た風景。どちらも、死がすぐ横に存在するのに、いやそれが故に、生きているもの達の感情は限りなく零度に近付いていく。そして、タテタカコの曲は、「誰も知らない」のそんな世界観をいつでも呼び出してくれる。今日電車の中で、いつものように読書しながら、そんな彼女の歌声に耳を傾け、現実のすぐ裏にある非現実に触れた。