須賀敦子 ユルスナールの靴

今日ルミネに行ったら、Book 1stが改装していた。ABCの残骸そのままの棚を使っていた中途半端な状態から、店内は一新。ABC好きの僕として言うのは辛いが、圧倒的に良くなっていた。まず、ジャンル別の棚分けはより整理され、しかも棚数が増えたため、本の絶対数も当然大きく増えた。人文書、ビジネス書を中心に、必読書が多く並べられており、ABC時代のように、ありそうで無い片手落ち感は減った。更に、新宿南口を意識してか、ファッション誌も充実しており、従来と変わらず多くの女の子が店内を闊歩しており幸甚。11時まで開いていることと併せ、本くらいしか趣味の無い根暗な僕にはたまらない環境。うん、よくやったと言いたい。


早速記念というわけではないけど、須賀敦子ユルスナールの靴」を購入。
この前読んだ「ヴェネチアの宿」に続き、静かな敦子ブームが僕に巻き起こっているのだった。この作品も、「記憶」を巡って物語りは始まる。幼少時代の靴にまつわる、生家でのエピソード。この作家は、まるで「死者」が過去について語っているかのような錯覚を起こさせる文章を書く。過去の記憶は、細部まで描写されていながら、どこか曖昧な部分を残す。まるで、私はもう既に死んでいるのだから、現在過去未来という時間軸は関係ないのよ、とでも言ってるかのような感触があるのだ。この辺りは、もう少し掘り下げてみたい部分なので、この作品をきちんと読み込んで上で考えてみたい。「記憶」というテーマと、この知性と教養を滲ませた文章には、かなり魅かれるものがある。須賀敦子、かなりよい。