カート・コバーンラストインタビュー

実家にて引き続き資料漁りをしていて、カート・コバーンが自殺した時の、ロッキングオンクロスビートを見つけたので読んでみた。カートの自殺は、当たり前だけれど、突然だった。(自殺はいつも突然にやってくる)当時の僕は高校三年生で、彼の自殺を塾で友達から聞かされたのを思い出す。とても悲しかった、と書きたいのだけれど、正直どう受けとめて良いのか分からなかった。当時の僕は、ロックとは生きることと等価だ、なんて今思えば大変に気恥ずかしい思いを抱いていたので、最も心酔していたカートの死は、僕の人生とやらを揺るがすべき事件だった。でも、今思えば、彼の死で僕の人生は何の変化も起こさなかった。受験生だった僕にとって切実だったのは、やはり目の前の勉強だったし、自分は随分と平凡なんだなあと今になれば思うだけだ。松村雄策が、ジョンレノンが殺されたときのことについて、とても美しいエッセイを書いていたけれど、そういう切実さは全然なかった。


ただ、今改めてカートのインタビューを読んで、REMの音楽について語った部分はぐっとくる。彼の音楽への愛情はとても純粋だったのだ。例えば、少年ナイフについて語った時も、同じだった。彼は、心からこういったバンドの音楽を敬愛していた。僕がこのころニルヴァーナを筆頭に、ソニックユースダイナソーJRといったアメリカのロックを好きだったのも、こうした純粋性だった。乾いたギターノイズやくぐもったヴォーカルの裏に、メロディがきちんと隠されている、ソニックユースのサーストンムーア言うところの、ハードコア・ポップ、の方法論はあの時代の空気をとても象徴していたと思う。

少なくともこのバンドであと1枚レコードを出すのはわかってる。どういうサウンドになるかもかなり想像がつくよ―空気みたいにすごく軽くて、アコースティックで、こないだのREMのアルバムみたいな音さ。彼らが書いたようないい曲を、2,3曲でいいから俺にも書けたらなあ・・・。あのバンドがどうやってああいうふうにやってるのか、俺にはわかんないよ。もう彼らは最強さ。まるで聖人のように成功に対処して、しかもグレイトな音楽を作り続けているんだから。
ロッキングオン Vol.23 Jun. 1994 P20