小説のリミックス

優雅で感傷的な日本野球 〔新装新版〕 (河出文庫)

優雅で感傷的な日本野球 〔新装新版〕 (河出文庫)

今日は北鎌倉へ小旅行。大船で時間があったので、そそくさと本屋に立ち寄り購入。高橋源一郎のエッセイや小説論は大好きなのだが、大学時代読んだ「さようならギャングたち」があまり面白くなかったので、彼の「小説」は他に読んでなかった。といっても、改めて言うまでも無く、彼の場合「小説」と「それ以外」の文章に明確な境界は無い。誰かが書いていたけれど、彼の小説は壮大な小説論といえるし、エッセイはそれ自身が小説であるともいえる。

で、「優雅で感傷的な日本野球」。これは文句なしに面白い。彼の作品は文学におけるテクノなんだな。リミックスですよ、リミックス。ここでは、高橋源一郎の頭に一杯に詰まった教養、文章、単語達が見事に凝縮された形で表現されている。遠い記憶を掘り起こすと、「さようならギャングたち」はなんか文章が作為的だった。でもこの作品は、彼の「リミックス」がとても自然な形で行われている。読むことそれ自体の快感、が確かにここにはある。読み手の解釈に委ねられた自由度が心地よいのだと思う。だから、テクノ。