満州裏史 太田尚樹

満州裏史

満州裏史

読みたい本に囲まれてほくほく嬉しい環境だけど、昨日買ったこの本、面白い!満州国に暗躍した甘粕正彦岸信介を追った「ノンフィクション」。ただ、ノンフィクションがかっこつきなのは、これ、厳密にはノンフィクションでなく多分に歴史小説の要素を含んでいるから。ノンフィクションの語りは普通3人称だけど、この本は、おそらくきちんとした資料の読み込みは背景にしているんだろうが、甘粕や岸を中心に彼等の1人称が多用され、場面ごとにその内面まで語らせている。

今のところ半分くらいまで読んだけど、とてもいい感じ。特に、満州国という幻惑的な舞台を背景にしているがゆえに、厳密に事実を追うだけでなくこうして小説的要素を含んでいることで、その頃の満州が持っていたであろう雰囲気をうまく伝えている。

あと、トリビアだけど、石原莞爾らが唱えた「五族協和」「王道楽土」って小沢征爾の父親である小沢開作が作った造語らしい。小沢開作は歯科医で、満州国設立前夜のころ奉天に住んでおり、関東軍参謀達、特に板垣征四郎石原莞爾と懇意にしていたようだ。それで、この二人が開作の作った「五族協和」「王道楽土」を気に入って使うようになったとのこと。更に、小沢征爾。名前をよーくみると、そう、「征」「爾」、つまり板垣征四郎石原莞爾の名前から一文字ずつ取ってる。おお、なんかめっちゃトリビアですね。

それにしても、満州国というのはその内実に触れれば触れるほど興味惹かれる。旅順、大連、奉天(今の瀋陽)、ハルピン、と一度巡ってみたいものだ。ちなみに、佐野眞一の「満州の夜と霧」も満州をはじめ中国で暗躍した里見甫について詳細に描いており、おすすめ。

阿片王 満州の夜と霧

阿片王 満州の夜と霧