キル・ビル&トニー滝谷

最近文化づいてるな。キル・ビルトニー滝谷を続けて鑑賞。キル・ビルはとにかく見事な切りっぷり。首、手、足がざくざくと切られ、血が吹き出る。血の赤やユニフォームの黄色、など原色がスタイリッシュな映像でよく映える。あと当然ながらタランティーノ作品、選ばれる音楽のセンスは素晴らしい。Mastervision氏は、「70年代末のB級映画の記憶を再構成した二次的創造物」と評しているけど、映画に詳しくない僕はその辺のタランティーノの意図や遊びはうまく読み取れなかった。この映画がそういったオマージュに満ちていることは、冒頭に深作欣二追悼の言葉が出てくることからもわかるのだけれども。

トニー滝谷は静謐な映画。丘の上から街下を見下ろした構図が数度使われ、登場人物がこちら側に向かって歩いてきたり、遠くの街並みが映し出されるシーンが印象的。あと、挟み込まれる雲や緑といった景色のワンショットが、写真を続けて並べて構成されたかのような印象を与えて美しい。また、イッセー尾形宮沢りえの抑えの聞いた演技は清潔でいいと思う。ただ、村上春樹の原作に比べるとトーンがやや暗すぎるきらいが。トニー滝谷の孤独感は確かに痛ましいものだけれど、それが少し強調されるすぎているような気がする。とはいえ、小説の映画化、という困難を丁寧な作りで乗り越えている佳作であることは確かかと。